クマが食物に対して強い執着心を持つ理由

 クマは食物に対して強いこだわりを持っている動物です。

 山中で食物が不足すると、食べる物を探しに人里まで降りてきます。

 なぜそこまで食物を求めるのでしょうか?

 理由は大きく分けて4つ あります。

クマが食物に執着する理由

冬眠を乗り切るため

 クマは冬の間、何ヶ月も食物を食べず、水も飲まず、排泄もしない状態で過ごします。

 つまり、冬眠に入る前の秋はできるだけ多くのカロリーを摂取しなければ死んでしまうという状態になります。

 冬眠を乗り切るために大量のエネルギーが必要なので、秋のクマは一日中エサを探しています。

 同じ木に何回も登り、木の実があれば何時間でも食べ続けるという食いだめモードに突入します。

食物が季節で偏るため

 クマの食べ物は、植物、果実、ドングリ、昆虫、魚などさまざまですが、季節によって手に入る量が極端に変わります

→ 草や芽ばかり(カロリーが低い)

→ 果実や昆虫が増える

→ ドングリ・クリなど高カロリーな食物が大量に出る

→ ほぼ食べ物ゼロで冬眠

 つまり、秋に食べられなければ冬を越せないというほど季節による差が激しいのです。

 そのため、秋にドングリが凶作だとクマは危険を承知で人里に降りてきて、柿、リンゴ、トウモロコシ、生ごみなどを必死で探します。

食物があった場所を記憶するため

 クマは学習能力の高い動物で、食物に関係する記憶力は特に優れています。

 例えば、以下のような例が世界中で報告されています。

 

・ 一度ミツバチの巣を見つければ、次の年もその場所に来る

・ 柿の木がある家を1回で覚え、翌年も訪れる

・ キャンプ場の生ごみの匂いを覚え、定期的に来るクマがいる

 クマは食物があった場所と匂いを長期間記憶することのできる賢い動物です。

 記憶力の高さ食物への執着をさらに強くしているのです。

太るために最適化された体

 クマが底知れないほど食物に執着するのは、体の仕組みにも理由があります。

・脂肪を効率よく貯める

・長期間絶食しても筋肉を失いにくい

血糖値を維持する能力が高い

・秋に食欲を爆発させるホルモン変化が起きる

 クマは 太るために最適化された体を持っています。

 したがって、糖分や脂肪を多く含む果実、蜂蜜、ドングリ、サケ、人間の食物に強く反応するのです。

 クマの食物に対する執着は生きるために必要な本能的行動学習能力の組み合わせによって起こっています。

クマの食生活

 近年、日本各地でクマの出没が増えています。山だけでなく、人里に現れることもあり、「クマは何を食べて生きているのだろう?」という疑問を持つ人も多いでしょう。
 実はクマは雑食で食性は非常に多様です。草も木の実も、虫も魚も、場合によっては肉も食べます。

食事バランス

 まず知っておきたいのは、クマの食事の約7〜9割は植物性の食物だということです。
 残りの1〜3割が動物性の食物(昆虫、魚、哺乳類など)です。

 つまり、見た目は大きくて肉食動物のように見えても、実際は草食寄りの雑食動物なのです。

季節別の献立

季 節主な食物
春(4〜6月)草や木の芽、フキ、タケノコ、アリの卵など
夏(7〜8月)ベリー類(ヤマブドウ、サクランボ、コケモモなど)、昆虫、蜂蜜
秋(9〜11月)ドングリ、ブナの実、クリ、カシ類など
冬(12〜3月)冬眠中でほとんど食べない

 特に秋は食いだめシーズンでヒグマもツキノワグマも大量のドングリやクリを食べ続け、体重を約1.5倍に増やします。

春の食物

 冬眠から目覚めたクマは、まず消化しやすい草や芽を食べます。
 冬の間、胃腸がほとんど動いていないため、最初からドングリや肉は食べられません。
 フキノトウ、ゼンマイ、ヤマブドウの芽、タケノコなどが中心で、水分を多く含むため腸をやさしく動かしてくれます。
 また、雪解けで弱ったシカや動物の死骸を見つけると、それを食べることもあります。
 ただし、この時期の肉類の割合は全体の1割以下です。

夏の食物

 夏になると、森には果物が多く実ります。
 クマはベリー類(ヤマブドウ、キイチゴ、コケモモなど)を大量に食べ、糖分をエネルギーに変えます。
 また、蜂の巣を壊して蜂蜜幼虫を食べることも多く、体に必要なタンパク質を補います。
 北海道や東北の養蜂地では、夏から秋にかけてクマの被害が増えるのはこのためです。

秋の食物

 秋は、冬眠に備えて食べる量が最大になります。
 この時期の摂取カロリーは、体重100kgのクマなら1日約2〜3万キロカロリーと言われています(人間の約10倍)。
 秋の飽食期で脂肪を蓄え、冬を乗り切る準備をします。

 ただし、ブナミズナラの実りが少ない凶作年には、クマは十分に脂肪を蓄えられず、人里に下りてリンゴなどを狙うようになります。
 近年の出没増加の背景には、地球温暖化の影響によるドングリ不作があると環境省も指摘しています。

肉や魚も食べる

 ヒグマは動物の死骸を食べたり、子ジカなどを襲うこともありますが、肉食の割合は全体の10〜15%ほどと言われています。
 ツキノワグマの場合はもっと少なく、ほとんどが植物や昆虫が中心です。

 ヒグマの中には、川に遡上するサケを捕まえて食べる個体もいます。
 サケが食事全体に占める割合は平均で約5%程度という研究結果があります。
 つまり、イメージほど魚ばかり食べているわけではなく、あくまで食べられる時だけ食べているのです。

魅力的なエサ

 果樹園や畑の作物(リンゴ・トウモロコシ・サツマイモなど)もクマにとっては魅力的なエサです。
 東北や中部地方では、ツキノワグマが柿の木に登って枝を折りながら実を食べる姿がよく見られます。
 また、牛舎の飼料生ごみも狙われることがあり、人間の食物由来の被害は年々増加しています。

 環境省の出没データでは、堅果類が不作の年には人里への出没件数が約1.5〜2倍に増える傾向が見られます。

ま と め

・クマの食事の約8割植物性、残りは昆虫や魚、動物などの動物性

・季節によって食べ物を切り替える柔軟さが、クマの最大の強み

・秋の食いだめ期には大量に食べて脂肪を蓄える。

・山の実りが乏しい年は、人里の果樹農作物を狙う傾向が強まる。

・人間側の対策(生ごみ管理・果樹の放置防止など)で、出没リスクを減らすことが可能。

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